今回は日本が誇る神戸の名店COL(コルウ)でビスポークしたスーツをご紹介。オーダーから仕上がりまでの流れも合わせてご覧ください。
COL(コルウ)のトランクショーにてオーダーしました。
その後仮縫い、中縫いと進めてきて、納品という流れ。全てトランクショーに合わせてお願いしているので時間がかかりましたが、その時間も含めて楽しむことが出来ました。おそらく神戸近辺にお住いの方であればもっとスピーディーに進むと思います。
個人的にはゆっくりで良かったと感じています。
ビスポークだけでなく所謂「オーダー」と言われるものは待っている時間も楽しいものです。仮縫いから中縫い、そして仕上がりという経過をスーツの変化とともに楽しめて幸せでした。
トランクショーでオーダー!
定期的に行われている東京でのCOL(コルウ)トランクショー。
事前にご連絡をいただいていて、ドーメルのヴィンテージトニックで良い生地があると聞いていました。これは是非見たいと思って伺いましたが‥やはり目移りしますね(笑)
もともとはミディアム~ライトグレーくらいのヴィンテージトニックがあれば、という話しをさせていただいていたのですが、ベージュのようなものを「よく似合うと思います」と提案されました。
似合うか自身はありませんが信じてみることに。
その他、ジャケットのディティールについての好みや、トラウザーズをどうするかという話しをしましたがジャケットは完全に「おまかせ」でお願いしました。
トラウザーズは股上深め、細すぎない、1プリーツ、サイドアジャスター、裾はダブルといった「いつもの」でお願いしました。あくまで主役はジャケットだと思うので、トラウザーズは主張せず中庸ものがいいかなと。
今回はヴィンテージのトニックということで、価格もかなり高額になるかと思われそうですが、実は「思ったほどではない」という価格になりました。もちろん高額ですがヴィンテージだから高いということはありませんでした。
COLではヴィンテージという希少価値で価格を吊り上げるようなことはしていないとのことでした。ヴィンテージの生地は昔の生地なので、その分仕入れ値も安かったはずで、それを希少だからといって価格を吊り上げるのは違うとのこと。
このあたりはとても良心的だと思います。
仮縫い
これぞ仮縫い。
そんな佇まいですよね。私の体に合わせて型紙を作って、その型紙に合わせて生地を切って、その生地をつなぎ合わせている状態です。
そのためボタンはないですし、ポケットもないです。芯地とかもちゃんとしたものは入れていないとのことでした。
仮縫いとか中縫いってテンションがあがります。
この中途半端な状態ってビスポークしないと見られないじゃないですか。だからこそテンションがあがるのかもしれませんね。
肩幅、着丈、袖丈いろいろチェックしていきます。もちろん自分の好みを伝えればデザインも変えられます。結構悩ましいのはトラウザーズの太さとかですね。今回は太すぎず細すぎずでお願いしましたが、ちょうどいい感じだったかなと。
実際にほとんど直すところはなかったと思います。
トラウザーズの丈をもう少し長くしていただくのと、ラペル幅をもう少し広くしていただいたくらいでしょうか。
ふと気になったので袖を外して確認する理由を聞いてみました。
「袖を外すのはカマの深さを見るのと、肩のあたりを見るためです。カマが深すぎると常に腋にあたってしまいますし、浅いと腕の可動性が低くなります。肩のあたりも袖がない状態だと指を入れて直接確認することが出来ます。」
ちなみに「カマ」というのはアームホールの下の部分。
アームホールはジャケットの袖と本体の接続部分、腕を通すところです。
中縫い
仮縫い同様、ボタンはないですしポケットもありません。でも明らかに仮縫いよりもスーツっぽくなっていますね。そして生地の雰囲気が良い。たまらないですね。色味と光沢が最高です。
トラウザーズの美しさが伝わりますでしょうか。
ワンプリーツならではのクリースの美しさもさながら、ヒップラインの美しさ。これは仮縫いから変更したポイントになります。
ジャケットも良いですね。ウエストが凄くシェイプされているように見えるかもしれませんが、実際にはゆとりもしっかりあります。着丈もエレガント。
背中のラインも文句なし。ウエストから肩にかけて、そして首に至るまでのラインの美しさ。斉藤さん。の場合、肩に特徴があるせいでなかなか美しい背中にならないので特に嬉しいですね。
仮縫い同様にアームホールもしっかりとチェック。文句なし!
最高のビスポークスーツをレビュー!
ブラウン(ベージュ)のヴィンテージトニックで仕立てたスーツ。
ブラウンといってもレンガ色を淡くしたような色味で好き嫌いがわかれる生地だと思います。斉藤さん。は気に入っていますし、自分に合う色味だと思っています。
ヴィンテージの生地なので見方を変えると売れ残りと言えるのかもしれませんが、そのおかげで手元に来ることになったのはラッキーですね。
今回のビスポークにあたってジャケットは特に指定せず「おまかせ」となっています。強いていうなら着丈については斉藤さん。の好みで長めになっていると思います。ただそれ以外はコルウの味が出ているのではないでしょうか。
こうやってハンガーに掛けると本当に見栄えしませんね。他のビスポークスーツもそうですが、やはり人が着て初めて映えるのだと思います。
この写真でご覧いただきたいのは前裾(フロントカット)になります。聞いたことがない方へ説明すると、写真下部にあるジャケットの前の裾の部分となります。ここの開きがほとんどないのが伝わりますでしょうか。
デザインの部分ではありますが、クラシックなスーツは開きが小さい印象です。着用したときも軽快さよりも重厚な印象となります。
ジャケット
襟の雰囲気はこんな感じ。ゴージラインは高くもなく低くもないと思います。
襟裏はこんな感じ。
ラペルのフラワーホールの下には、しっかりと「フラワーループ」がありました。
当ブログでは再三書いていますが「神は細部に宿る」です。ジャケットの襟を立てて着ることはまずないですし、フラワーループを使うこともないでしょう。ただこういう細かい積み重ねが全体に表れると思っています。
肩の雰囲気はこんな感じ。
ギャザーなどはなく所謂マニカカミーチャなどではありません。
ビスポークなのでマニカカミーチャにすることも出来ると言ってましたが、特別好きなわけではないので普通にしてもらいました。肩のイセ込みが多いのでふっくらしていますよね。
当然「本切羽」ですしボタンホールも手縫い。
ぷっくりとしたボタンホールが何とも言えず美しい。当然着心地には関係ないディティールの部分ですがこれも1つの醍醐味でしょう。
生地の雰囲気も伝わりますでしょうか。
ドーメルのトニックといえばモヘア混の生地で有名ですが、このモヘアが良いんですよね。ザラっとしていて上品な光沢があり、張りとコシがしっかりとあります。
春夏の生地の中ではリネンと並んで好きな生地になります。
トラウザーズ
トラウザーズは斉藤さん。が好きなディティールとなっています。
サイドアジャスター、ワンプリーツ、裾はダブルの5㎝です。
スーツやトラウザーズをオーダーするときはいつもだいたいこれ。いつも通り。
ジップフライではなくボタンフライ。
ボタンには糸が巻かれてきちんと高さがあります。
これ実は重要である程度の高さがないとボタンの開け閉めがし難くなります。
ジップにすればいいという話しもあります。正直なところ特別なこだわりはないのですが、手縫いの場合は「手縫いの味」が感じられるポイントにでもあるのでボタンを選んでしまいます。チラッと見えていますが、ブレイシーズ用のボタンを付けてもらいました。
ウエスマン(一般のトラウザーズでベルトを巻くところ)の幅は普通。
ワンプリーツだしサイドアジャスターを除けば極々普通のトラウザーズです。昨今ではサイドアジャスターが完全に市民権を得ていることを思えば特徴がないトラウザーズと言っていいでしょう。
でもこれがいいのです。奇をてらわない上質なトラウザーズこそが末永く付き合えるものだと考えていますので。
試着するとこんな感じ。
着て最初に思ったことは上品で上質なスーツだな、ということ。
スーツは歴史を積み重ねて男性を最もカッコよく見せる服となりました。余計なことはしなくていいと思います。斉藤さん。が「ああしたい」「オリジナリティを出したい」なんて考えても先人たちの研鑽を超えることなんて出来ませんから。
見て下さい。この後ろ姿を。右肩が下がっているというか、左肩が張っているといのか、肩のバランスが悪いのを見事に補正して美しい背中にしていただきました。
そういえばジャケットを羽織るときにいつも通りの動作では着られませんでした。アームホールが小さくカマの位置が高いので、例えば左腕を通してから右腕を通すということが出来ませんでした。仮縫い、中縫いで入念にチェックしただけあって完璧。
ビスポークスーツを使ったコーディネート紹介。
タイドアップだけでなくポロシャツでのコーディネートも。
クラシックなディティールのスーツですが工夫をすればカジュアルな使い方も出来ます。ポロシャツだけでなくハイネックのニットをインナーにしたり、スニーカーを合わせても良い。
着用期間は3月~6月で真夏は暑くて着られません。秋になって涼しくなるとまた着られるようになります。トニックは春夏というより春秋の生地ですね。
まとめ。
いかがだったでしょうか。
今回は神戸にある名店COL(コルウ)でビスポークしたスーツをご紹介しました。
コルウのビスポークスーツは1人の職人がすべての工程を手縫いで仕上げる「丸縫い」で仕立てられます。手間暇かけて仕立てられたスーツはとても素晴らしいものとなりました。携わられた全ての方に心から感謝を申し上げます。
今回のスーツのお値段は当時で 397,000円(税込) でした。今考えるとかなり控えめな価格だったと思います。残念ながら現代ではこの価格だと難しいと思います。
職人が「丸縫い」で仕立てられるのは月に2、3着と何かで読んだことがあります。生地代は自分で支払っているにしても、それ以外の副資材はお店持ちであることも考えると高額なのは仕方がないと思います。もちろん稼ぎが良いわけではないので何度も何度も出来ることではありませんが(笑)
スーツが好きでいずれはビスポークをしたい。ビスポークは経験あるけどコルウでもやってみたい。1人でもそういう方の参考になれば幸いです。
今回は以上です。ありがとうございました。