「天声人語」にあやかって「渓谷飛越」、つまりグレンオーヴァー。30年以上前に新聞で連載されていた珠玉のメッセージを全7回にわたって紹介する企画。今回は第3回、是非ご覧いただきたい。
尊敬する人は?と聞かれて真っ先に思い浮かぶのは「赤峰幸生」と「江頭2:50」。
先日、赤峰幸生氏から資料を整理している際に見つけた資料ということで、過去に新聞に連載していた「渓谷飛越」の記事をご連携いただいた。
全8編からなる「渓谷飛越」だが、第3回となる今回は4編目をご紹介させていただく。
30年の時を経て現代のアパレルはどうなっているのか?
差異性の同一性
あわただしい師走の日曜日に街に出た。
メンズショップの店頭には、海外提携ブランド、記号だけのブランドを取りまぜて、今日もまた「心」を感じさせない空虚な商品が山積みされている。
寒々とした冬空の下で、物悲しそうに夢の島行きのゴミトラックを待っているかのように。
それは、目的意識がなく、ちょっとしたイメージだけで商品をつくる企業の産物であろう。目的もなく情報を集め、コンピューターを駆使して、迅速に売れ筋、死に筋をつかむことだけに汲々(きゅうきゅう)としている日本のアパレルメーカーが生み出したものである。
情報とは、本来、企業の明確な目的に沿って、必要なものを集め、方向を決定していく手段にすぎないはずだが、日本のアパレルメーカーには、基になる目的というものがない。
ただ売り上げと利益を追求するだけだから、企業の大小を問わず、「モルト」ともいうべきものが欠けている。
モルトとは、何年たっても変わらないその企業の本質である。
魂のようなものだといってもいい。
企業の存続性や適正規模は、モルトの多さによって決まってくるはずだから、経営者は、モルトの量を基準にそれぞれの途を選択するべきだろう。
しかし、ほとんどがモルト有無や多少にかかわらず、売り上げの拡大を求めてしまう。そのためにだけ、新ブランドを出したり、海外の企業と提携したりする。
昨今世間をにぎわせているどこやらの企業の株式譲渡さわぎも、無から有をつくり出すことが不得手で、「モルト」はつくれなくても、「金」だけはつくれる日本人を象徴するような出来事である。
モルトの樽はいくつあるのか、いつまで飲みつづけられるのか。
これからのアパレルメーカーに問われているのは正しくこれだろう。
企業の本質、魂を「モルト」と詩的に表現されている。
モルトとは「麦芽」を指すが、これは言うまでもなくウイスキーの「シングルモルト」から取ったのだろう。つまり企業を蒸留所に見立てているのだ。何年経っても変わらない本質と表現しているが、ウイスキーを熟成年数で飲み比べれば「本質」が変わらないことがよくわかる。
さて、少し嚙み砕いたところで内容に触れよう。
輸入浸透率という言葉がある。どれくらい輸入しているかをまとめた数字だが、1991年に51.8%だったものが2018年には97.7%になっている。つまり国内の服はほとんど輸入品ということだ。
現代から振り返ると1980年代に連載していたこの記事は予言のようではないか。
昨年(2021年)にはレナウンが破綻した。
バブル期に絶頂を誇った企業が坂を転げるように破綻したのだ。
やはり大切なのは理念であり、本質であり、魂なのだ。
現代においても「何となく売れそうな」商品が溢れている。それを雑誌やインフルエンサーを使って売るのが主流だろう。
算盤を叩き、利益を挙げるためにファッション好きには愚民でいてもらう必要がある。
雑誌やインフルエンサーが右といったら疑わずに右に行って欲しいのだ。
これを愚民政策と言わずになんというのだろうか。
いつまで愚民であり続けるのか。
きっとこの愚民政策は長くは続かない。
情報量が増えすぎたし、雑誌は求心力を失いつつある。
大量生産大量廃棄の時代も終わり、化学繊維が主流の時代もいずれは終わるだろう。
残念で仕方がないのはこれが外圧によって終わるからだ。
日本が変わるのではなく、海外の流れで変わることになるのが残念だ。
インフルエンサーに踊らされている人たちが歯がゆくて残念だ。
ただただ残念だ。
結局は影響力なのだ。
こんなブログで何を言っても雑誌や動画に出ているインフルエンサーには勝てない。
それが現実だ。
だからこそこの記事を読んだ方には是非考えていただきたい。
1980年代と比較して現代はどうだろうか?
他の渓谷飛越の記事はこちら。
【渓谷飛越】時代を超えて現代へメッセージ【第1回】 - 1978 -アラフォーからの一生モノ探しー
【渓谷飛越】時代を超えて現代へメッセージ【第2回】 - 1978 -アラフォーからの一生モノ探しー
まとめ。
いかがだっただろうか。
今回は赤峰幸生氏の許可を得て、過去に新聞に連載していた「渓谷飛越」から全8編中の第4編目「差異性の同一性」をご紹介した。
誤字脱字には注意したが、全て手で入力したのでもしあったなら申し訳ない。
筆者の感想は全て文中に記載させていただいた。
皆様はどう思われただろうか。
毎週1回の更新を予定しており、次回は第5編目「アメリカン化石」をご紹介したいと思う。
最後に赤峰幸生氏に心からの感謝を。