今回はスーツの着心地と生地の関係について。既製品も買うしパターンオーダーもするしビスポークもします。ふと思ったのです。スーツの着心地って仕立てよりも生地の方が重要なのかもって。
一般的なイメージは以下ではないでしょうか。
既成 < パターンオーダー < ビスポーク
万人向けに仕立てられた既成のスーツよりも、自分の体に合わせて型紙から作られたスーツの方が着心地が良いはずだ。既成の型紙がバッチリという人にとってはその限りではありませんが、この認識は概ね認識は間違っていないと思います。
その分価格も変わってきますから。
ただ、ここに”生地”を絡ませるとややこしくなります。
着心地の一点でみると逆転が全然あるということ。今回はそんな話をしてみたいと思います。
スーツの生地、基本はウールなんです。
「当たり前だろ」って思う人と「えっ」って思う人がいると思います。
羊毛の歴史は紀元前に遡るくらい、遥か昔から人間の生活に密着したもの。日本ではその限りではありませんが、スーツの歴史を考えるとウールが基本なのだと考えます。
実際のところ、斉藤さん。が好きな生地は以下のようになります。
- リネン
- モヘア混(ウール混紡)
- ツイード(ウール)
- フランネル(ウール)
圧倒的なウール率。
春夏秋冬、全てにおいて生地にウールが使われます。
詳しくない人からすれば夏にウール?って思われそうですが、何なら日本ならコットンよりも涼しいと思います。リネンですらリネン混になればウール混紡が基本。それくらいスーツとウールは切っても切れない関係となります。
スーツの着心地と生地の関係。
既成 < パターンオーダー < ビスポーク
これは生地によって簡単に覆ると述べました。
いや、簡単に覆るは言い過ぎかもしれませんが、言いたいことはそういうこと。
例えば写真のスーパーブリオ。大好きな生地ですが、モヘア混というのは生地が硬すぎて着心地がいいとは言えません。ビスポークしましたがそれでも硬くて肩回りが厳しい。モヘア生地は伸縮性がないんだと思います。
もちろんモヘアならではの良いところもありますが、単純に着心地だけで比較するとウールに軍配があがるというのが感想です。
さて、本題。
同じDORSOでウール(ゴールデンベール)でパターンオーダーしたスーツと、モヘア混(スーパーブリオ」でビスポークしたスーツ。着心地が良いのは?
答えはウール(ゴールデンベール)でパターンオーダーしたスーツとなります。
モヘア混のスーツを着込んでいって変わる可能性はありますが、何となくそうはならないと感じています。この硬さはウールのツイードとは違う硬さだと感じていて、いずれ馴染んでもツイードのような馴染み方はしないんじゃないかと。
つまり着心地については仕立てを生地で超えることがあるということ。
着心地だけで価値が決まるわけではない。
着心地はとても大事。
でもそれだけが全てではないんですよね。モヘア混とウールを比較してウールの方が着心地がいいと述べましたが、モヘア混が悪いわけではない。それは当たり前ですよね。ビスポークしているわけですから。
そしてどちらが気にいっているか?
そう問われたらモヘア混のスーパーブリオのスーツ。おそらくこれを超える春夏のスーツを手にすることはない、そう言い切れるくらいに気に入っています。
着心地の良さだけでスーツの勝ちが決まるわけではない。
ただし、着心地が悪いスーツは論外です。これは着心地が良い前提の話しとなります。
まとめ。
いかがだったでしょうか。
今回はスーツの着心地と生地の関係について書いてみました。必ずしもビスポークが最高だ!っていうのは間違い。ずっと言い続けていますが、既成でパターンが体に合うのが一番いい。だってそのブランドが自分に提案し続けてくれるようなものですから。
ちょっとわかり難かったかもしれません。覚えていて欲しいのは、着心地においてビスポークが必ずしも最良ではないということです。選ぶ生地でも全然変わる、そう覚えておいていただければ。
今回は以上です。ありがとうございました。