1978 -アラフォーからの一生モノ探しー

アラフォーのオッサンが自分のスタイルを探し続けるブログ。

【渓谷飛越】時代を超えて現代へメッセージ【第4回】

「天声人語」にあやかって「渓谷飛越」、つまりグレンオーヴァー。30年以上前に新聞で連載されていた珠玉のメッセージを全7回にわたって紹介する企画。今回は第4回、是非ご覧いただきたい。

 

 

尊敬する人は?と聞かれて真っ先に思い浮かぶのは「赤峰幸生」と「江頭2:50」。

先日、赤峰幸生氏から資料を整理している際に見つけた資料ということで、過去に新聞に連載していた「渓谷飛越」の記事をご連携いただいた。

 

全8編からなる「渓谷飛越」だが、第4回となる今回は5編目をご紹介させていただく。

30年の時を経ても変わらないアパレルの体質と、騙され続ける消費者。

そしてブレることのない赤峰幸生氏。

 

 

アメリカン化石

私事で恐縮だが、8月10日叔父が他界した。

社会学者で清水幾太郎という。

日本のアジテーターとして、ジャーナリストとして数多くの著書を残した。右寄りだ、左寄り過ぎる、と評価はマチマチだったが身近に接した印象からした印象から言えば、学者の立場で本物の日本を模索しつづけた1人だったと思っている。息を引き取ったあともしっかりと目を見開いていた。

 

学問と商業的な服づくりを同列に論ずるのは、いささか気が引けるが、1つの独自な文化を形成しようとする点では相通じ合うものがある。

 

「トラディショナル」、あるいは「トラッド」と同じ意味で別の言葉はありませんか。最近よくこのように質問される。

まるで日本人のためのトラディショナルな服が完成してしまったからトラッドという言葉が時代遅れになっている、というかのように。

 

われわれがたずさわる服の歴史は戦後40年、実質的には20年そこそこである。

まだアメリカ文化の単純な導入期を終えたばかりだ。昨今は、それがイギリス、フランス、あるいはイタリアに向いているだけの話である。志向的には何も変わっていない。日本人の手でつくった日本人のための服という”一般教養課程”すらまだ終了していない。

 

市場には本物らしい偽物が横行しすぎている。

目まぐるしく変化する日本文化が生み出す数々の無駄な商品が、低完成度品の集約市場をつくりつつある。このままでは、自ら夢の島をつくることになりかねない。

 

本物が出来ないのは多分、紡績、機屋、縫製工場、アパレルメーカー、小売り、広告や情報分野にプロフェッショナルが存在しないことに原因がある。みな時間や研究を重ねず即席でつくってしまう結果だろう。

 

これからの国際的日本人のために、真のトラディショナル・ウエアを、完成度の高い本物をつくらねばならない。そうアジテートしつづけていきたい。

 

冒頭で叔父である清水幾太郎氏が死去されたことに触れられている。

筆者は、清水幾太郎氏の著書を読んだことはないが、先日「文藝春秋2022年5月号」を読んだ際に、氏の「核の選択」という著書が取り上げられており、42年前の日本で核武装を訴えたことを知って衝撃を受けた。

奇しくも現代では、ロシアによるウクライナ侵攻により、核兵器を保有することの重要性が浮き彫りになった。核兵器を保有する国に殴られないためには、自身が核兵器を保有する必要があるのではないか。本気で考える必要があるのではないか。

 

トラディショナル」、あるいは「トラッド」と同じ意味で別の言葉はありませんか。最近よくこのように質問される。

 

筆者はこれを読んで ”ぞっ” とした。

例えばスリーピーススーツなどで使われる「ベスト」はアメリカで「ベスト」、イギリスで「ウエストコート」、フランスで「ジレ」と呼ばれる。日本では何時ごろから「ジレ」と普通に使うようになったのだろうか。

何もアパレルに限った話ではない。昔「デザート」と呼ばれていたが気が付けば「スイーツ」なんて言葉を使うようになっている。

 

別に言葉を使うことが問題なのではない。

新しい言葉=オシャレのような価値観が問題であり、言葉を上手く使ってモノを売りつけるのが問題なのだ。

 

そう、つまりは「本物らしい偽物」を新しい言葉でラッピングして売る。

これが昔からある日本のビジネスのやり方なのだろう。

 

2022年でも通用してしまっているのが残念だ。

 

日本人のためのトラディショナル・ウェア

自ら夢の島をつくっていたアパレルメーカーの多くが倒産していった。

理由は、日本人のためのトラディショナル・ウェアが出来たからではなく、ファストファッションが台頭したためだろう。

 

それでは日本人のためのトラディショナル・ウェアはないのだろうか?

 

そんなことはない。

 

赤峰幸生氏がグレンオーヴァー、Y.Akamineを経て立ち上げたAkamineRoyalLineがあるではないか。神戸COLはハウススタイルを「世界に通じる服」と謳っているではないか。

ナポリ風や英国風ではない、日本人に向けて自分たちのスタイルを提案しているテーラー、アパレルメーカーがあるではないか。

 

本物はすでにある。

 

他の渓谷飛越の記事はこちら。

【渓谷飛越】時代を超えて現代へメッセージ【第1回】 - 1978 -アラフォーからの一生モノ探しー

【渓谷飛越】時代を超えて現代へメッセージ【第2回】 - 1978 -アラフォーからの一生モノ探しー

【渓谷飛越】時代を超えて現代へメッセージ【第3回】 - 1978 -アラフォーからの一生モノ探しー

 

まとめ。

いかがだっただろうか。

今回は赤峰幸生氏の許可を得て、過去に新聞に連載していた「渓谷飛越」から全8編中の第5編目「アメリカン化石」をご紹介した。

誤字脱字には注意したが、全て手で入力したのでもしあったなら申し訳ない。

 

筆者の感想は全て文中に記載させていただいた。

皆様はどう思われただろうか。

毎週1回の更新を予定しており、次回は第6編目「本物という偽物」をご紹介したいと思う。

 

最後に赤峰幸生氏に心からの感謝を。